放課後に居残って夜

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自動化は本当に求められているのか

対話型AIというジャンルの製品を扱う会社にいるため、自動化やチャットボットのトピックにふれることが多くなった。

 

チャットボットという言葉そのものはよく聞くし、実際にウェブサイトなどで見たりサポートページの右下に待ち構えていたりする。それが自分にとってWelcomeかと言われると、うざったく感じる気持ちのほうが強い(意見には個人差があります)。

 

普及しているチャットボットを使う中で出てくる課題でよく指摘されるのが、こちらの問い合わせ意図をうまく捉えてくれない、というもの。例えば、旅行会社が提供するチャットボットがあったとして、問い合わせされるものには

  • 空港での登場手続きを教えて
  • 機内持ち込み可能か知りたい

などがあるだろう。こういった一問一答形式のやり取りには、予めチャットボットが用意しているFAQで対応が可能だろう。しかし例えば、

  1. 来週の私の東京から旭川までの航空券を確認したい
  2. それから、大阪行きの分も

と続いたとしよう。すると#2がかなり難しい。一つの問い合わせに対して回答して終わる仕組みをつかっている場合、文脈を引き継ぐことができない。そうすると、#2だけを見て判断するが、#1がないと何を聞きたいのかはっきりしないのだ。

 

このような文脈を理解して応対できる機構、これが対話型AIを搭載したチャットボット(あるいはバーチャルアシスタントなどとも)の特徴の一つとして言われることがある。なおここで文脈の理解、文章からの意図理解、そして重要情報のピックアップなど、自然言語処理NLP)や自然言語理解(NLU)と呼ばれる技術が支えている。

 

このような高機能を世の中は求めているのか?答えはYesと思われる。一つ記事を参考に意訳して進める。

 

記事元はCIO.comのスポンサー記事から。

同記事によると、このような自然言語処理を活用したサービスは、多くの金融機関で利用されている。

IDC調査によるとグローバルのAI投資は$204B(2025年までに)に到達するとあり、金融産業はその投資において2番目に大きな産業分野であるとのこと。

その中で期待されるチャットボットの活用については、期待とのギャップが指摘されている。フォレスターのレポートでは、その提供者の95%が、お客さまの問い合わせ内容やこれまでの応対について記憶しておいてほしいと指摘している。そしておよそ50%程度のチャットボットしかこのような機構を備えていないとも。

NLPを搭載しているチャットボットであっても、文章中の意図理解や、感情などの把握、複数の意味を持つ言葉による意図の誤認などが課題である。

 

高度に最適化された対話型AIは、およそチューリングテスト(ある問いかけをしたときの回答が、人間のものかロボットのものか判別できないくらいであれば、テスト合格)を突破できるくらいのものと期待されている。このジャンルを標榜するベンダーは、上述した文脈理解を要する問い合わせに応対できることが期待される。

 

チャットボット(従来型のとでも表現しよう)から対話型AIへと目線が移るなかで、これまでの課題や手間を解決されることの期待が高まり、加えてAIを用いることが一般的には、お客さまとの結びつき(エンゲージメント)がより高まる傾向が指摘されており、この結びつきがさらなる製品・サービス購入、つまりロイヤリティの高いお客さまを創出・維持できるのではとの期待につながっている。このようなことから、Juniper Researchによると、2023年には、金融業界のチャットボット利用における削減コストは$7.3B、保険業においては$1.3Bにまで到達するだろうと予測している。

 

問い合わせを受ける製品・サービス提供者側の時間削減にも効果が期待できる。つまり反復性の高いタスクを請け負うことによる社員の時間削減や他の活動への振り向け、それによる労働意欲の向上などである。

 

お客さまやユーザーの問い合わせデータを集積できることも効果として謳われる。これらを分析することによる洞察と、そこから次の戦略につなげるというものだ。

 

一方、対話型AIにおける課題としてよく指摘される事柄には顧客データ、PIIなどの保護がある。コンプライアンスやレギュレーションによってはSaaSベースでなくオンプレでの自社管理が必要になることがある。その他の課題として、NLP技術を活用するために十分な学習やテストが必要になるという点だ。ほとんど違和感がないくらいに、お客さまとの応対を実施できて初めて、これらの学習やテストが報われることとなる。

 

意訳終わり。

 

対話型AIによるお客さま対応の自動化が期待されていることに間違いはなさそうだ。自動化できる部分は反復性が高いものと途中であったが、これを実現するための開発コストやサービス利用などのコストが、人員の置き換えなどと比較してROIが出るのかどうか、これが普及促進のポイントとなりそうだ。この点についても継続調査する。